2014年06月01日

13.なぜ、体は老化するのか?

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私が子どもの頃は「人間は歳を取ると老化する」と言われていた。何事も新しいことを言う人はやや得意げに話すもので、「人間はね、加齢で老化するのは仕方が無いんだよ。体力も頭も20歳がピークであとはダメになって行くだけなんだ」などと言ったものだ。



そう言われるとガックリくる。なにしろ平均寿命が80歳を超えるのだから、人生というのは最初の20年だけが発展し、あとは衰退するだけというのだから夢がない。



特に、「脳細胞は20歳から年々、脱落していって、再び回復することはない」と長く言われてきた。この間違った説明でどのぐらいの人が「歳のせいだ」と錯覚して、何も対策を打たずに、結果として間違いの犠牲になったかと思うと、学問も罪作りだ。



最近の研究によると、このような学説の多くが間違というっていたことが判ってきた。頭脳や心についてはまた別の機会にするけれど、今回は「体は老化するか」ということについて最近の研究も含めて整理をしておきたい。



簡単に言うと、「体はかなりの年齢まで老化しない」ということだ。そのうち、人体の筋肉や運動神経を極限まで使用する激しいスポーツでは、40歳ぐらいで衰えが来る。



この現象を、「最大のパワーを100として」整理すると、普通の生活では100のうち、30ぐらいを使う。でもスポーツの一流選手は遺伝的に、また訓練によって少なくとも瞬間的には80ぐらいまでその能力を出すことができる。



しかし年を重ねると、年齢にもよるけれどフルパワーが60ぐらいになるので、80から60へと落ちる。そこで引退する。それを見て「俺も歳だから」と普通の生活をしている人が錯覚する。でも、普通の生活をしている人はもともと30ぐらいしか使っていないので、60になっても何の変化もないはずなのだ。



筋肉は継続的に鍛えればほぼ一定の状態を保つことができる。私の知り合いの武道家にお聞きしたら、むしろ歳と共に筋肉は向上しているという。それは自分で鍛錬できる筋肉が増えるからと説明された。



骨の医療の研究会に出てみると、骨は日々、交換され新しいカルシウムの層を形成する。だから良質のカルシウム(吸収しやすいカルシウムで、食物から摂取する)を豊富にとり、適切に骨に負荷を与えれば、若々しい骨を維持することができる。



もちろん内臓もそうで、お酒やタバコを飲みすぎたり、栄養のバランスを欠いたり、臓器の病気にならないように注意すれば適切に交換していくので老化を防ぐことができる。ただ一部の繊維組織などであまり交換されないとされているものもあるが、「更新されない」のか「更新する仕組みが発見されていない」のかは明確ではない。



このような体のことを簡単にまとめると、
1)過度な負荷をかけ続けると、代謝量がふえて若干、寿命が短くなる傾向が見られる、
2)適度な負荷(運動)やストレッチなどの刺激、柔軟性などのケアーをすると、70歳ぐらいまではほとんど変化がない、
3)体の老化の多くは、「高校の時より体を動かしていない」と言うことに尽きる。



「歳だから」とあまり動かなかったり、かつては電車で席が空いても座らなかったし、若いときでも疲れは同じだったのに、楽をするので体が老化するということとまずは考えるべきだろう。



最近、私は15分ほど日光浴をして、若干の運動もしています。あまり劣化していないようです。



(平成26年5月25日)
posted by 武田邦彦 at 13:22| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

12.なぜ、人間は「太る」のか?

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先日、「肥満の医学」に関する論文を少し読んでいたら、とても面白いものがあった。単なる医学ではなく、なかなか興味深い物だったので、その一部を紹介したい。



最初の論文は「人間は本来、太るはずはない」ということが書かれていた。動物はその動物に最適な体重にするために、おおくのシステムを持っていて、「これ以上、栄養を取る必要が無い」と言うことが判るようになっている。



だから、特殊な病気になった動物や、人間が無理矢理、餌を与える動物などを別にしたら、「太った動物」というのはいない。確かに群れをなして何1000匹で草原を歩いているヌーでも、シマウマでもその体型はほとんど同じである。目の前にあふれるほどの草(食料)があるのに、痩せたり太ったりしていない!!



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それに対して人間はBMI(肥満指数)で20以下のガリガリの人と、BMIが30以上の太った人がいる。いったい、これはどういう理由なのだろうか?と論文では問うている。研究の結果、人間も本来は太ることはできないが、頭脳が優先して必要も無い栄養を取ることがあるから太るという結論が書いてあった。



そうなると、人間が太るという要因が二つあることがわかる。一つが「体重を制御する能力が病気で破壊された」という状態で、これは体の病気だ。もう一つは、体の異常は無いが、頭脳が壊れているという場合だ。



多細胞動物が誕生して以来、は虫類まではDNA、つまり遺伝情報の方が優性だったが、哺乳動物になって僅かに頭脳情報が上回るようになり、さらに人類は脳が発達した哺乳動物よりさらに10倍程度の脳情報がある。だから、時に遺伝情報(生物としてのまともな情報)を脳情報が抑制することがあり、それが肥満の原因とされていた。



私の今までの経験などに良く合う。たとえば、健康な時に脂っこい物が美味しいし、不調になると食べたくなくなる。朝はあまり食欲がないが、栄養を使い切った夕方は何でも美味しい。お醤油を掛けたいときには血圧が低く、末端の血流が不足している時だ。



私の食欲制御はまともに行っているように見える。病気がちだった私も40歳ぐらいから今に至るまで、どんな生活をしても、何を食べても、たらふく食べても、食事を抜いても、いつでも62キロだったことを考えると、体は弱かったが、体重の制御装置は正常だったらしい。



「肥満防止」とは「心に病を持たず、美味しい物を美味しい、食べたいときには食べる」ということで良いのだろう。



もう一つは、「これ以上、栄養は取る必要は無い」ということをどこで感知しているかだ。一つは血中のグリコーゲンのようなもので、これは濃度を検出していると考えられている。その他にも人間の制御系だから、いろいろ工夫しているに相違ない。



でも、一つ疑問がある。食べ物を口に入れるときにはまだ体はその食べ物の影響を受けていない。食べてから少なくとも10分ぐらいは胃に入った食べ物の種類などを検知して、食べるのを制限するのにかかるだろう。そうすると、常に食べ過ぎの危険があるのではないか?



そう思っていたら、ある論文に「このぐらいで食べるのを止めよう」と感じるのは「血中の栄養」などではなく、「口の中で噛んだ回数」で分泌される物質によるとあった。そうか!!



生物界のさまざまな現象を勉強していると、あたかも複雑な仕組みのように見えて、実は単純な判定をしている時がある。これもその一つで食べるものがある程度一定なら、わざわざ栄養分を測定しなくても「噛む回数」だけで判定ができる。その方がエネルギーが要らない.



そうなると、肥満の原因は「食物が柔ら無くなったから」とか、「甘い飲料はいくら飲んでも満腹感がない」からと思われてきた。近くにいた人が「俺はカレーを飲み込む」と言った.まさにカレーを飲み込むといくらでも食べることができるのだろう.



「動物はまれにしか肥満はいない」と言うことを考えると、人間が肥満する原因は、「頭脳優先の食事」と「噛まない食事」にあるようにも思える.だいたい、私は「朝食を採ると良いことがある」などは信じていない.食欲がないときには食べない。



(平成26年5月24日)
posted by 武田邦彦 at 13:21| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

2014年05月22日

11.「睡眠」とはなにか?

かつて「不眠症」といったけれど、最近では少し広い意味で「睡眠障害」と言う。一言で言えば「眠れないこと」だ。私も長い間、不眠症に苦しみ、なにしろ「夜が明けてこなければ眠たくない」という厄介な状態だった。次の日は午後から眠くて仕方がない。



でも、現代の大きな病気とも言われるほど睡眠に障害がある人がいるというのに、「睡眠とはなにか?」がまだ十分な解明されていないし、疑問点も多い。



私が「睡眠」に本格的に疑問を持ったのは、20年ほど前だった。そろそろいい年になって来たし、それまで不眠症で悩んできたので、なぜ自分が元気なのかが理解できなかった。人よりかなり睡眠時間が短いのは確かで、睡眠薬やお酒をかなり飲んできたので、その障害もでて不思議ではなかった。それなのになぜ自分は元気なのだ?!



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睡眠の研究を勉強してみると、多くの見解があったが、総じていえば、「睡眠時間は7時間、そのうち4時間半が体内疲労物質の処理、2時間半が頭の情報整理」という感じだった。データをさらに詳細にみると、一つの疑問が生じてきた。



日中の活動で体に蓄積された「疲労物質」は、「意識を失っても、意識があっても同じペースで処理してくれる」ということであり、「意識を失うのは頭の整理だから2時間半でよい」と考えられることに気が付いた。



つまり「睡眠」とは、「横になって基礎代謝に近い状態(安静)の状態を言うのか、それとも意識を失っている状態か」が分からないのだ。それでは実験してみようと思い、「横になる時間は7時間を確保」して、「そのうち、意識を失っている状態を2時間半以上取る」とした。そして「横になっているけれど、意識がある」と言うときにはできるだけ体の力を抜くこと、眠れないでイライラしたら体を動かしてしまうので、ラジオや録音を聴く(目は使わない)という方法を試みた。



これは大成功し、「眠れない恐怖」から完全に解き放たれ、睡眠薬もお酒も不要となった。つまり、「横になる」というのは何時でもできるからだ。



その後、さらに鍛錬をして、現在は、「7時間、横になっている」、「意識を失っている時間は必ず2時間半以上になる」、「意識があってイライラしたら、録音を聴くか、パソコンで面白い記事を見る」と言うことにしている。



横になった後、「意識あり」→「意識なし」→「意識あり」を繰り返すので、自分としては「意識のある時しか覚えていない」という原理原則にそって「全く眠れなかった」と勘違いする。これを防ぐために時々、小さい音を出す仕組みを作り、その音を何回、覚えているかを調べたら、「一晩中、眠れなかった」という感じでも、「半分は意識を失っている」ことがわかった。



ところでいまだに「7時間睡眠」=「4時間半の体の休養」と「2時間半以上の頭脳の整理」でよいのか、それとも=「7時間、意識を失っている状態」なのかは不明である。そして新方式(眠れないとイライラしたらパソコンを見る)が良いことかどうかも不明だ。やり始めてからまだ2年なので、決定的な不都合があるかもしれない。最近はパソコンではなくあまり面白くない本にしようかとも思っている。



ところで、学問的な睡眠の定義は「意識を失っているがすぐ覚醒する状態」だが、



「横になって安静にしている」と言うのが「睡眠」とどのような関係にあるかの研究はない。また日本で最も信頼できる名古屋大学の玉腰先生のご研究では、最初に示した7時間睡眠が良いという結果と、「男性は睡眠が短いほうが良く、女性でも5時間睡眠で良い」という下のグラフに示す結果を得ている。4時間半で良いのか、これも自分で人体実験をしてみたい。
posted by 武田邦彦 at 17:51| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

10.健康で長寿になるためには

さて、血圧、コレステロール、ストレスと進み、健康と長寿に関係するもので残されたものは、感染症(肺炎、インフルエンザ)や糖尿、ガンなどだが、それは少し後にして、ここで中間まとめとして、いったい、人間の健康や寿命を決めるのは何であるかを少し深く考えてみたい。



一つ一つのことは少しずつ詳しく考えていくことにして、まずは全体像を俯瞰してみる。まずは「運命的なもの」があり、個人としてはやや改善しにくいものだ。その一つに「人間の体の大きさ」、「人間の頭脳のビット数」などがあり、これは動物全体で強い相関関係が認められている。



【運命的なもの】
1) 体の大きさ
2) 動く程度
3) 頭脳の大きさ(ビット数)
4) 運不運
5) 遺伝気質・体質
6) 病院が近くにあるか



次に、人間の集団性にかかわる病気、寿命がある。このことはまだ医療分野ではほとんど研究が進んでいないので、多くの方がピンと来ないようだが、まずは「人間の健康は集団性に関係がある」ということを考えるきっかけになって欲しいを思っている。



【集団性】
6) どのような社会に属するか 
7) 社会に貢献しているか
8) 好かれているか(デディケーション)
9) 異性がいるか
10) 体を若くたもっているか
11) 心を若くたもっているか



動物ではすでに深く研究され、集団性の動物は集団に役立たなくなると、個体の健康に問題がなくても死ぬことが知られている。「子供を持つ、集団に役立つ」ことが歓迎され、それが(ここは推定だが)免疫系を活発にし、体の防衛のシステムが働くと考えられる。



「好かれている」というのは「怒りっぽいと病気になる」というのと表裏一体で、体や心を若く保つことも集団として望ましい方向である。



【個人の体の健康】
12) 食事に注意しているか
13) 軽い運動をしているか(辛い思い、重労働、エアコンのない生活)
14) 被曝に注意しているか
15) 一日7時間横になっているか(睡眠)
16) 朝日に全身を当てているか



集団性と健康に比べれば、個人の体を健康に保つ方法は繰り返し説明されている。現在の厚労省の政策や各医学会の議論も、人間の健康のうち、個人の体の健康だけに偏していると考えられる。



【個人の心の健康】
17) すっきりした部屋で生活しているか
18) 適度に悪いことをしているか(お酒も含め)
19) 怒りっぽいか穏やかか
20) あきらめて、かつ張り切っているか
21) お風呂にゆっくり入る(熱いか微温いかは善し悪し)



そして最後に個人の心の健康を保つことが大切で、ごく最近、これも健康に大切なことだということが一般的になり、それが「ストレス解消」とそれに伴う「免疫系の活性」などが期待されている。



いずれにしても、今回のまとめでは「これまで「こうしたら健康だ」という項目は人間の健康や寿命のごく一部にしか過ぎない」ということ、そして、私たちは「健康と寿命」ということから、人生全体を見渡してみたいと思う。



そして最後に、人生の長さとは、(楽しい時間)の長さであり、眠っている時間も、つまらない時間も、健康だけを考えて我慢している時間も、人生の時間から引き算する必要があることに注意したいと思います。



楽しい時間 60年間
人生の時間 80年間だけれど、そのうち40年は辛い人生だった
と言う場合、60年間の人生を送った人の方が長寿とも言える。



(平成26年5月9日)
posted by 武田邦彦 at 17:51| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

9.ストレスのかわし方(2)対策編

「ストレス」という言葉がはじめて日本に登場してしばらくは、「ストレスとは何か」が主で、その頃、「どうしたらストレスが起きるのですか?」という質問がある時代だった。



その後、しばらくしてテレビなどで「ストレスの減らし方」が解説された時期があった。最近は、さらに先に進んで、「ストレスは仕方がないから、その解消法」と言う段階に進んできたように思う。「そんな小出しにしないで、最初から正確に指導して」と言う人もおられますが、医療も最初から進歩しているのではないので、仕方がありません。ただ、医師は患者に心配させないようにやや断定的に言われますが、それは親切心なので、これも仕方がありません。



ストレスの解消法も最初は「真面目なもの」が多かったが、さらに最近では「どうも我々は人間だ」と言うことに気が付き、より現実的な対策に変わりつつある。その一つが「お酒を飲んでいる人は、飲み続けたほうが寿命は長くなる」などである。



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このグラフは長い間産業医をしていた立派なお医者さんが整理したもので、お酒が好きな人が無理にやめると、かえって短命になることを示しています。一般的に「お酒は体に悪い」、「酒は百薬の長」と言われ、医師はよくお酒を飲みます。このことから、「適度なお酒は、禁止するほどの害はない。お酒におぼれてアルコール中毒にならなければ良い」と言う程度が正確でしょう。



ここでタバコも同じだと書きたいのですが、タバコのことを書くためには、私の体調の良い時でないと、反撃が厳しく、体力的に反撃に負けてしまうので、ここではお酒だけにしておきます。



また、お酒などの他にも先回にご紹介した先生が教えていただいた「住まいの中のストレス要因」はなかなか興味あるものです。



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「冷える住宅」、「臭う住宅」・・・アメリカは湿気が少ないので、北の部屋の方が賃料が高く、日本はカビが生えるから南が好まれます。
「玄関の靴」、「廊下の段ボール」、「未整理なもの」・・・それを見るたびに無意識に頭の神経伝達物質を消費すると思われます。
「不要なカレンダー」、「時計」、「置物」・・・それでなくてもゴチャゴチャした毎日の中で、さらにそれを複雑にするものです。



私はと言えば、比較的簡単で、「今日も朝」で、「昨日は晴れ」ですから、その日暮らしで、ストレスもその日暮らしで忘れるようにしています。これもすぐにはできませんが、毎日訓練しているとそのうち、昨日のことを忘れるようになります。



いずれにしても、健康を損ねるものには「集団性からもたらされる制限」、「自分で自分をあきらめる心」、「ストレスをため込む行為」などがあることがわかります。それでは果たして、「病原菌やウィルスに攻撃されず」、「交通事故などに遭わず」、「血圧、コレステロールなどを正常の範囲に収めて食事のバランスを取り、運動をし」、「ストレスをその日のうちに捨てる」と人間は病気にもならず、死にもしないのでしょうか?



(平成26年5月10日)
posted by 武田邦彦 at 17:50| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

8.ストレスのかわし方(1)精神論

ストレスが病気のもとになることは十分に知られています。といっても、私の若いころはストレスと言う言葉がなく、最初に聞いた時には何かさっぱりわからなかったことを思い出します。



最近の研究の主流は、ストレスを避けるのも大切だが、それは仕方がないものとして受け止め、ストレスに耐性をつけようという方向に進んでいます。



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先回、登場していただいた先生の話を再びしたいと思います。私の考えと少し違いますが、だからこそ、引用しながら整理すると立体的に考えることができると思います。



ここでは、まず第一に「運動とリラックス」を進めておられますが、これは「私たちは動物だ」ということです。動物と言うのは読んで字のごとく「動くもの」ですから、動いて始めて私たちは動物になるというわけです。



次に「体を冷やさない」とあります。この先生は漢方もご専門なので、人間の体は冷えてはいけないということを強調されます。現代流に言えば、血流を良くして、免疫力を上げるということで、湿布より温布、血圧に注意して熱いお風呂(湯治)などがこれに当たります。



「早寝、早起き、十分な睡眠」も当然でもありますが、体の中の老廃物を取り、頭の再整理を行うことで、十分な睡眠と言うのは若い人は7時間、年配は6時間がもっとも健康と言われています。でも、このシリーズの終わりに整理したいと思っていますが、老化を防ぐためにはできるだけ若い人の生活を取り入れなければならないので、そういう意味では年配の人も日中、活発に動いて、睡眠も7時間取るというのが正しいでしょう。



「朝起きたら太陽に顔を向ける」というのは、体内時計のリセットで、これも最近では定説になってきました。「町は西に発展する」と言いますが、毎朝、東に出勤する・・・朝、太陽に向かって歩く人が残るからと言われます。



「ビタミンB1とタンパク質とミネラル」とあります。これはこのお医者さんのご推薦ですが、肉にはタンパクとビタミンB1が多く、多種類の食材にいろいろなミネラル(金属)が入っています。



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次に6番目からですが、5番目までと違い、やや社会性のあるものが登場します。まずは「人と美味しい食事をする」ということで、人間が集団性であることからきています。「他人と美味しい食事」といいますと、まずは「誰かと付き合うこと」、そして「その人が自分に好意を持っている」ことが前提ですから、人のために何かをするということでもあります。



「歌う、芸術に身を浸す」というのは人間が「知情体」で成り立っていて、スポーツ(体)、芸術(情)は知恵(知)とともに人間として大切だから、ストレス解消になるということです。この芸術や歌の中には、競馬やパチンコなども入ります。



「鏡に映った自分に微笑みかける」というのはなかなか深淵ですが、まず「自分に自信を持つ」こと、それから「ニコヤカでいること」、そして「ああ、これが自分なのだな」と思うことがストレスの解消になるという意味です。つまり「自分は自分なのだ。これでよい」とほほ笑むわけです。



「カイロス時空に遊ぶ」というのはさすがこのお医者さんが教養が高いので、このような表現をしていますが、私の言う「今日も朝」で、人間は長い時間を考えるより、やれる時にやり、その日、その日が大切と言う意味です。そうしたら本当にストレスは小さくなります。



「身近な誰かに優しくしてみる」と書かれていますが、良い言葉ですね。これも私流に言えばデディケーションで、人間は他人に親切にすることに世って、自分のストレスが解消する、つまりは人間は集団性の動物で、自分が良くなるより他人が良くなる方が、自分の健康になるという一見矛盾した関係を示しています。



(平成26年4月30日)
posted by 武田邦彦 at 17:50| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

7.人の寿命を決めるもの

(このシリーズは一般の方が少しでも自分の健康を知り、お医者さんの話をより正しく理解するためのもので、医師が行うインフォームドコンセントの患者側の勉強を目的としています。)



さて、少し話が変わりますが、人の寿命はなんで決まっているのでしょうか? かつてローマ時代には平均寿命は25歳だったのに、なぜ今は80歳なのでしょうか? 世界の中には平均寿命が50歳ぐらいの国も多いのに、良い国に生まれたものです。



動物の寿命は、まず第一に体の大きさ、第二に頭脳の大きさ、で決まります。体の小さな昆虫などは1日も生きることができないものも多いのに、ゾウやクジラなどの巨大な動物は数10年も生きます。これは心臓の鼓動回数とか体表面からの放熱量などの物理的なものが関係していると言われています。



第二に頭脳が大きいこと、文明が発達している方が平均寿命が長いのも確かです。動物でも頭脳が大きい(ビット数)ものの方が長生きですし、人間は体の大きさに比べると断然、頭脳が発達しているので、他の動物より長寿です。また同じ人間でも文明が発達している方が長生きです。



これは「より合理的な生活をするから」、「危険を未然に防ぐことができるから」と考えられ、知恵をつけることが長寿につながると言っても良いでしょう。



もう一つ、とても重要なのは「社会に貢献すると長寿になる」と言うことです。動物、特に人間のような集団性を持つ動物は、「集団性を持つ」と言うこと自体が一つの個体<一人の人間>だけの命ではないことを示しています。



人間は、人間として、日本人として、郷里の一員として、家族の一人として、生きています。だから、人間でもなく、愛国心が持たず、郷里に郷愁を持たず、家族を愛していない場合、生命力が衰えるのは仕方がないことです。



これこそ長寿の根源ですから、今後も整理をしていきますが、大きなことが二つあります。それは「なぜ、人間の女性が閉経後も生きているのか」ということと、「独身男性の寿命は短い」と言うことの2つに良く表れています。



詳しいことはすでにブログにも書いていますが、哺乳動物で人間の女性だけが閉経後も生きているのは、孫や他人のお世話をすることによって体が若返ることが知られていて、そのことによって哺乳動物の中で人間の女性だけが生き残って元気だということが分かっています。



また、男性の独身者はかなり早く死ぬのですが、これは一夫多妻制の動物のはぐれオスの寿命が短いことに対応していますし、小学校の男の子が、「警察官になりたい。世の中の役に立ちたいから」と答え、女の子が「AKBになりたい。注目されたい」と答えるのにも現れています。



男性は子供を産めないので、社会の役に立たないと生きている意味を失い生命力が低下します。また女性は子供を産み、育て、お世話をすることに世って生命力を保つことができます。男性は社会のため、女性は家族のためと言うのは人間の体の構造からくるもので、男女同権と言う問題とは質が違います。



つまり自分の健康は他人のためになることによって得られるということになり、それが最も大切なのでしょう。中日新聞の対談である医師が「自分のいのちは、自分の所有物ではない」と言われましたが、その通りなのでしょう。



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その時に先生が最後に示されたのがこれですが、ややお若い先生なので、まだ表現は枯れていませんが、「自分と誰かを幸せにする選択を心がけよう」、「心静か」、「勇気」、「慈悲」、「感謝」などはいずれも自分だけのことではないこともわかります。



頭の中で考えることと、もともと動物としての人間がどういうものかと言うこととは違いますし、私たちは確実に「動物」ですから、そのことを健康や寿命を考える時には考慮に入れなければならないと思っています。これは「価値観」ではなく、「事実」なので、やや考えるのが辛い人がいることもわかっているつもりですが、ダーウィンが言ったように「真実を知るには勇気がいる」のであり、結局は真実をしている方が健康で長寿だということも事実です。



なぜ人間の寿命が決まるのかという研究がさらに進むことを期待しています。



(平成26年4月30日)
posted by 武田邦彦 at 17:49| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

6.中性脂肪と高**症、脂質異常症

コレステロールや中性脂肪についての厚労省の説明は実に傑作です。



「脂質異常症というのは、血液中の脂質、具体的にはコレステロールや中性脂肪(代表的なものはトリグリセリド)が、多過ぎる病気のことです。「血液の中にアブラなんかあるの?」って思うかな。だけど、血液中にはコレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸の4種類の脂質がとけこんでいるんです。



 ところが、血液中の脂肪が異常に増えても、ふつうは、痛くもかゆくもないんです。だから、自分では全然気づかないし、「脂質異常症です」といわれても、それが何を意味するのかピンとこない人が多い。それで、そのまま放置してしまうんですね。」



とあり、さらに
「異常とされる基準値を上回る人は、男性では30代から50代にかけて増えて、50代ではおよそ2人に1人が、女性では50代から増え始め60代でおよそ3人に1人となっています(平成18年国民健康・栄養調査)。」
とあります。



奇妙ですね。医師が勝手に「異常とされる基準値」と言うのを決めて、男性の50歳代では2人に1人が「異常」と言われる。言われた方はキョトンとする(ピンとこない)と言っていますが、当然です。日本人の50歳代の男性はピンピンしていて、元気です。その半分が「異常」と言われても、「それ、薬を売りたいため?」とつい聞いてしまいます。



厚労省は同時に「70歳までは日本人は健康」と言っているのですから、「健康は異常」と言うことになってしまいます。中性脂肪は1000をこえればはっきりとした病気がありますが、それ以下の場合、一部のガンが増えるというデータがあることはありますが、健康との関係ははっきりしません。



もともと、脂肪についてはコレステロールでも中性脂肪でも奇妙な論理があります。それは「戦後、日本人の生活が欧米化して脂肪の摂取量が増えた。だから体内の脂肪関係が増えた。体重も増えたので、減らさなければ」というものです。このことは「欧米化すると健康や長寿に悪い影響がある」ということを前提にしていますが、なぜこのようなことが前提になるのでしょうか?



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次のグラフのように、戦後、一貫して日本人の男性の体重や脂肪量は増大しています。厚労省は「そのまま放置してしまう」と言っていますが、放置したほうが良いのではないかとも思います。



もし体重が増えたり、脂肪が増大したら健康に悪いなら、その結果が何らかのデータで出てきます。総合的な健康状態を示す最も良い指標が、平均寿命か健康寿命ですから、戦後一貫して体重や脂肪量が増えていて、それが「悪い」ことなら、平均寿命が下がっているはずです。



和田先生と言うお医者さんが「データ主義」と言っておられます。私も個人的に知っていて、立派なお医者さんですが、彼がそう言わなければならないほど、現代の医療の世界は、宗教のようにデータが無くても断定するということが多いのです。



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もちろん、このグラフに示したように戦後の日本の男性の平均寿命は世界でも最も顕著に上がっています。だからデータから言えば肥満や脂肪量はあまり健康とは関係がないか、良いことと言うことになります。



また世界各国の平均寿命が延びていることから、栄養状態が良くなる方が健康には良いと見たほうが良いでしょう。平均寿命は医療体制にも関係がありますが、日本の場合、最近では70歳ぐらいまで、元気な人が増えたことは間違いありません。



人間の体は「一つの病気」だけに注目することはできません。栄養が良くなって小太りになると、若干、心臓系の病気が増える傾向があっても、それ以上にガンになりにくいなどのことあれば総合的に考えなければいけないからです。



いずれにしても中性脂肪は特殊な人以外はほとんど考えなくても良いとも言えます。中性脂肪が少し多いからと言って病気にするというのは何か別のことを考えているのではないかと思いますし、良心的なお医者さんとお話しすると「体が異常ならいけませんが、元気ならこのぐらいは」と言われます。



(平成26年4月30日)
posted by 武田邦彦 at 17:48| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

5.コレステロールはどうしたらよいのか

コレステロールは血圧よりもう一つわかりにくいのですが、血圧が「物理的な圧力」なのに対して、コレステロールは形のある「物質」なので、理解はしやすいという面があります。



コレステロールの誤解は、今から50年ほど前、研究が不十分なのに「コレステロールは低いほうが良い」という誤解が日本社会に蔓延したことにあります。これはヨーロッパの研究をそのまま日本に持ってきたからで、ヨーロッパで「コレステロールが高い」というとアメリカやフィンランドでみられる300(血中100ccあたりのミリグラム)ぐらいのことで、日本人はもともと150から200ぐらいですから、300の人の症例など当てはまらないのですが、それを間違ったのです。



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つまり、この図のようにコレステロールが250ぐらいになると心疾患の死亡率が高くなるのですが、200ぐらいまではほとんど変わらないのです。特に日本人のコレステロールは少ないし、グラフでわかるように120ぐらいから200ぐらいまでほとんど心疾患死亡率に変化はありません。



でも、一時期、NHKが大キャンペーンを張って「コレステロールは悪い」と言ったものですから、引っ込みがつかず、「善玉は良いが悪玉は悪い」という奇妙なことになり、今でもそれが引き継がれています。



もともとコレステロールは体になくてはならないもので、食事でもとることができますが、その大半(体にある量の実に80%)は体内で必要に応じて作られます。つまり「コレステロールの少ない食事」などはほとんど意味がない可能性が高いのです。もしコレステロールの少ない食事をしますと、体はコレステロールが不足して体内で合成しなければなりませんし、その逆なら合成しなくてもとることができます。



「コレステロールが低いほうが良い」と言うことには最初から反論がありました。コレステロールが少ないとがんの発生が増え、うつ病が進行するからです。またコレステロールは血中に沈着する可能性もあるのですが、逆に血管を若く保つためにも必要です。ここでは次の図に示すように、コレステロールが200以下になるとがんが急激に増え、コレステロールが250を超えると虚血性心疾患が増えるというグラフを出しておきます。



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ただ、このようなグラフはそのまま受け取れない場合があります。コレステロールが低いとガンになるのか、ガンになるとコレステロールが減るのかどちらかだからです。

それはコレステロールが多い時も同じで、単なる相関関係だけではなく、因果関係の研究がどのぐらい進んでいるかによっても違います。



血圧の基準が130から150に代わったように、コレステロールも上限が200から250にあがりました。これは「理論的に200以下が良い」と言う今までの結果とは別に、「健康な人のコレステロールはどのぐらいか」と言う別の視点から整理してわかったものです。



また女性は年齢によって大きく体が変わるので、45歳までは240、55歳までは270、80歳まででは280となりました。女性の方が若干、コレステロールが多くても良いようです。むしろうつ傾向になったり、がんになる方が怖いからでもあります。男性の場合は40歳から60歳ぐらいが20ぐらい高いようです。



つまり、「コレステロールが高い」というのはなんら問題ではなく、体内で合成する量を体が良く分からずに、作らなくなったり、作りすぎたりするのが問題です。食料からの補給は20%にしかすぎませんから、もし食事を変えてコレステロールの摂取量が2倍になっても、体内合成量を80%から60%に下げればよいだけのことです。



まだ研究は途上ですから、これも「平均的な数値が良いだろう」ということと、「コレステロールが高い低いが病気ではなく、コレステロールの調整ができなくなった状態が病気」ということがわかります。でも、現在はよくわからないので、数値を見てある一定以上で「高脂血症」などという「病名」がついて薬がでたりしますが、高脂血症という病気はやや怪しいという感じがします。このことは中性脂肪と一緒に整理をします。



これまでの間違いを一回NHKも放送しなければならないと思います。卵はコレステロールが多いのですが、食事から多くとれば体内で作る量を減らすから問題はないということになるのですが、今のところ、かつての間違いを認めて、私たちの毎日の食事や生活をどうすればよいのか、まだ指針は出ていません。



(平成26年4月29日)
posted by 武田邦彦 at 17:48| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

4.血圧の「正常値」とはなにか?(2)

体は必要な血液を体中に流そうとし、それに必要な圧力を心臓で作って血液を送るということですから、人によって「正常な血圧」というのが決まることを先回、整理をしました。



つまり、普通に私たちが「病気」という中には、細菌やウィルスに襲われた場合が多いのですが、血圧やコレステロールなどは「自分で自分の体のコントロールが弱る」という病気のように見えます。



でも、厄介なのは現代の医学では「そうではない」と考えているのがわかりにくいところです。というのは、体が血圧を決めるとき、「必要な血の量」は理解しているが、「血管が破裂する危険」は自分の体がまったく考慮していないと現代の医師は考えているということです。



つまり、人間の「心臓はバカである」というのが現代医学の考え方です。それに加えて「日本人はバカである」という二つを足し合わせて、「血圧は低いほうが良い」と言う結論を得ています。



人間の体は歳を重ねると血管の中にカスがたまります。その量がなかなか大変なもので、だんだん積もり積もると血管の太さが半分にもなることは珍しくありません。そうなると、心臓は頑張って血圧を上げて血を体の隅々まで送ろうとします。それが「年齢とともに血圧が上がる」ということをもたらしています。



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これまで高血圧学会や厚労省は120ぐらいを「至適血圧」、つまりもっとも良い状態としてきましたが、そうなると、20歳代の男性でも平均が123ですから「人生で最も元気な時」の半分の人が「高血圧と言う病気」ということになります。



これはいくらなんでも医学が間違っているという以外にはありません。もし現在の寿命で20歳代の男性の半分が「病気か異常」ということになると、健康で人生を過ごすことはできないということになり、厚労省やWHOの言っている「健康年齢」と言う概念にも反します。つまり、至適血圧120というのは血圧を下げることが薬の販売を増やすのにもっとも手軽と思われても仕方ありません。



そこで人間ドッグ学会が「どのぐらいが適当な血圧か」(演繹的)という考えを止めにして、逆に「健康な人はどのぐらいの血圧か」(帰納的)という調査をしたら、150ぐらいということになったのですが、それでも55歳より年配の男性の半分以上が病気と言うことになります。これでも少し低すぎる。つまり、健康寿命と言うのはおよそ70歳ですから、血圧は155ぐらいまでOKと言うことになります。



何を間違っているかというと、人間の体は「血管が破裂することを意識していない」と考えているので、たとえば60歳代の人の平均血圧とされる154は、体が、自分の血管が弱くなっていることを知らずに、ただ血を流せばよいと判断するから130を超えるのだ、本当にその人のことを考えれば130まで下げなければならない、人間の体より高血圧学会の判断が正しいのだ、ということだからです。



それが本当かもしれません。また、逆に現在の血圧の知識では、血流量についてのコントロールはよくわかっているのですが、体が血圧の上限をどのようにして決めているのかが分かっていないから奇妙なことになっているのか、まだわからないことです。



つまり、血圧をコントロールする神経、腎臓、酵素などが「血管の破裂」ということを考えずに154にしているのか、それともそれも計算に入れて、血の巡りが不足するデメリットと、血管が破裂するデメリットを考慮して60歳代の最適血圧を決めているのだというのと、どちらかわからないのです。



そこで、「血の巡り」の方は、お風呂に入ったり、運動をしたりすることによって補い、血管の破裂の方を重視しようというのが現在の方針です。医療が進歩したら、体のコントロール機能が壊れて154なのか、長寿のための最適が154であるかどうかがわかってくると思いますが、私たちの人生と医療の進歩はマッチングしませんから、医師の方の経験で決めてもらわなければならないのです。



それでもさらに一つ問題があります。それは年齢によらずに「正常血圧」が130とか150とかに決まるのかということです。人間は年齢によって筋肉などが衰えますが、年齢に関係なく一定の性能を持たなければならないとすると、歳を取ると筋肉増強剤を使わなければならないという基準になるかも知れません。それは筋肉増強剤のメーカーにとってはたまらないでしょう。



今の医療の実力から言えば、年齢別の平均血圧が「正常」であるとして、少し血圧を低めにして、血管壁を強くし、血管のカスを取るような生活をするのが現実的で前向きと思います。つまりその人にとって「異常な血圧」というのを医師と十分に相談して決めることだと思いますが、そのためにはこのブログで書いた血圧の本質、測定の注意、考え方を整理しておく必要があると思います。



少し専門的ですが、繰り返し読むことで本質がわかり、医師と相談できるレベルに達すると思います。



全体として健康を保つためにどうしたら良いかを整理する時に、再び血圧を取り上げます。ともかく血圧というものをはっきり理解しておくことが第一です。



(平成26年4月29日)
posted by 武田邦彦 at 17:47| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

3.血圧の「正常値」とはなにか?(1)

つい最近までの「血圧の正常値」は130以下となっていて、「低ければ低いほど良い」ということでした。少なくとも高血圧学会や厚労省のパンフレットなどには「130以下」としか書いていないので、「血圧=0」でも正常と言うことになりますが、血圧がゼロなら血流が止まるので、死んでしまいます。



普通は血圧が80以下の場合、低血圧症として「病気」であると診断されます。また手術のような時には血圧が下がるのはとても危険です。当然ですが、血圧は「低いほど良い」と言うことはなく、ここ10年ほど、国民に誤解を与えてきた学会や厚労省の責任は重いでしょう。



最近、人間ドッグ学会が「健康な人の血圧」を調べ、正常値はほぼ「150以下」ということになりました。現在はまだ147という数字が出ていますが、この数字は学会及び厚労省などが科学の世界では常識である「有効桁」という概念を知らないことによります。



科学の議論をする時には、そこで使用する数字がどの程度の精度で言えるのかが問題になります。まず最初にそれを決めないと数字の表記ができません。先回のこのシリーズで示したように、血圧は時間、季節、場所などで30ぐらいも違うのですから、147と150を区別することはできません。このような時には有効桁を2桁取ることになりますので、147は150と表記するのが正しいのです。



さて、「血圧の正常値」というのは130なのか150なのでしょうか?



もちろん、どちらでもありません。「正常な血圧」と言うのは体が「正常」であったとして、その人が必要な血液を全身に届けるのに必要な圧力です。だから、血管の太さ、曲がり方、体重、代謝量、病気との闘い、汗の成分と量などあらゆる要因を入れて体が決める血圧で、たとえばその人の「正常な血圧」は110である時もあるし、170の時もある。



だから、その人が血圧を測定したら、140だったからと言って、「正常」ではない。もともと110が「正常な血圧」の人は、何かの原因で30も高いことになる。反対に、正常な血圧が170の人は、何らかの原因で30も低いことになる。



もし「正常」というのを「本来、その人の必要な血流を流すのに必要な血圧」という定義を使うと、血圧が正常か、異常かは「圧力」を測るのではなく、末端の血流を測る必要があるということになります。



医師ではないので、あまり詳しく知る必要はないのですが、具体的には、神経(交感神経、副交感神経)、腎臓、酵素、タンパク質などが血圧を調整しています。もっとも簡単には体が「血圧が異常に高い」と判断したら、腎臓で血を濾す量を増やして血の量を減らして血圧を下げたりします。



ややこしくなってきたので、ここで一回、整理をしますと、血圧はその人が必要な血液を体の末端まで届けるために必要な圧力なので、その人の体によって違います。形式的には、心臓から送り出す血液の量と血管の太さによって「圧力損失」がきまりますが、送り出す血液量は交感神経などが、血液の量は腎臓などがコントロールしています。



寝ている時には血流を減らしして良いので血圧が下がるのが正常で、朝起きると張り切る必要があるので、血圧は上がり、昼はやや緩み、そして夕方、また少し頑張るということで血圧が20も上下するのです。147か150かと悩む必要がないこともわかります。



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その他に血管の太さなどは、これも神経の働きは、暖かい寒いなどでも変わりますし、年齢を重ねると血管の内部にカスがたまり血管が細くなります。冷え性なども末梢の血管に十分な血が行かないことが原因とも言われます。



だから普通に考えると「高血圧」というのはその人の正常な血圧を自分の体では決めることができず「不必要に高い圧力」になるということになりますが、実はそうではないのです。高血圧症というのは「体の機能が正常でも、病気とする」という考え方なので混乱が生じています。



もちろん、専門の血圧の医師や厚労省はよくわかっていると思いますが、まだ血管の強さと体の血圧調整の関係が学問的にわかっていないのを言わないことが問題と私は考えています。



(平成26年4月29日)
posted by 武田邦彦 at 17:46| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

2.血圧の多様性を理解する(2)

「血圧が高いほうが健康で、血圧が低いほうが命の危険が低い」という考え方は正しいでしょう? それとも「血圧の正常値は130、至適血圧119」という表現がより正しいのか?



もし厚労省が新鮮味のある政府機関で、医学界が製薬業と分離されていて、学会のボス同士の勢力争いなどがなければ、「至適血圧119」を信用してよいでしょう。でも、今の状態では「自分の命と健康」を「政府と審議会の言うこと」に託することは少し無理があります。そこで、本当のことを良く知っておきたいと思います。



第一回は、「血圧は必要があって高い」ということを整理しました。血圧が低いと病気になりやすい傾向があることは間違いありませんが、かといって高くても良いということでもないのではということを指摘しました。まずは「低ければ低いほど良い」という現在の認識はややバランスを欠くと思われるからです。



第二回目は「正常値120」というのは、1)個人に適応できるのか、2)血圧に「正常値」というものがあるのか、について整理をしてみます。



あることを論理的に考える時には、最初に「前提」を決めておいた方がしっかりします。この時「前提」が正しいかどうかを最初に考えると堂々巡りをするのだ、最初は「とりあえず、そうする」ぐらいに曖昧に決めるのが、頭の整理には便利です。



この場合は、「現代の60歳代の日本の男性は健康だ」として、血圧の問題を考えてみます。現代の60歳代の日本の男性は「健康な生活」をしていると厚労省もWHOも認めていますので前提としては一応の根拠があるでしょう。






人間ドッグ学会は全国で測定されたデータベースをそのまま公表していますので、これまでのメタボのように「何を根拠に数字を決めたのか」もわからないという状態ではないのですが、それでもなかなか理詰めで行くと不明なデータもあります。



まず、従来から60歳代の男性の「平均の血圧(高いほう)」は142とされています。しかし、これまで「正常な血圧」は120から129とされていたので、この値を使うと、60歳代で健康な男性はわずか22%となり、「60歳代は健康だ」という他の厚労省のデータとも反します。



この結果を少し丸めて整理しますと、60歳の男性の平均的な血圧は140で、130から下の人が22%です。もし血圧の分布が平均から見て対象的なら、150以上の人も22%で、残りの56%の人が130から150の範囲に入っているということになります。ややブロードな分布で、もともと血圧と言うのは個人差が大きいものだとされる多くの意思の方の感覚と合います。



つまり、血圧は人によって大きく違い、60歳代でも血圧が100ぐらいでも健康で、180でも健康な人が結構おられるということになります。人間ドッグ学会の発表では生データのばらつきはHDL-コレステロールが示されていますが、60を中心として30から90ぐらいにばらついていて、人間の体のコントロールのばらつきはその程度とも考えられます。



血管壁が強く、心臓も強く、病気になりにくい人というのは、(免疫や遺伝気質など多くの要因がありますが)血圧が高く、血流量が多い場合もあるでしょう。これに対して、血管が太く、あまり曲がりくねっていないので、血を送るときにあまり圧力が要らない人は血圧が低くても血流量を保つことができるので、健康であるということも言えます。



つまり、あまりにも当然ですが、「人によって「正常な血圧」というのは違い、少し内輪に言えば110ぐらいから160ぐらい」という感じです。低いほうは平均の140から見て30、高いほうは20ぐらいの差を取ったのは、「血圧が高いと顕在的な問題がある」という知見を少し取り入れたのですが、本当は110から170と思い切って数学的に処理して、さらに考えたほうが良いとも思います。



とりあえず、まず第一に「60歳代の男性で血圧が160で正常・健康な人がいる」としてみます。おそらく教育的配慮ではなく医学的見地なら、まずはこの前提で「おかしい」と思われる医師はいないと思います。






次に血圧の季節要因ですが、このグラフで分かるように、外気温と血圧は密接な関係にあります。外気温が25℃の時には120だった人は、外気温が10℃になると126になります。上昇率は5%です。したがって、160が正常な人が寒いところで血圧を測ると、168という血圧になります。



次に一日の時間でいつ血圧を測るかについて整理をしてみます。血圧は人間がある状態の時に必要な血流を確保するための圧力ですから、当然、体が横になっていてエネルギーの消費量が少ない睡眠中は下がり(だから寒くなって布団をかける)、張り切っている時には高くなります。






このグラフは1日の血圧の変化で、張り切っている午前中は血圧が高く、眠くなる午後にはいったん下がり、睡眠中はずいぶん低いことが分かります。寝ている時は別にして、起きている時でも午前中に血圧を測ると138の人が午後に測定すると133になります。つまり4%の差があります。



厚労省がこれまで言ってきた「正常血圧」というのが、外気温が何℃で、血圧の測定時間が午前か午後かを明示していませんので、そこはいい加減ではないかと思いますが、60歳代で160の人は、気温が低く、午前中に測定したら175にもなることになります。



さらに有名な「白衣血圧」があります。血圧は「必要に応じて高くなる」のが「正常」ですから、危険が迫る(医師の前にでる・・・自分の体にメスを入れる人の前)と血圧が上がるのは普通で、緊張症の人は平均値より20も上がる人がいるとされています。



日常生活で測定された血圧より病院で測定した場合、5%程度上がる場合は「白衣高血圧」と診断されます。もし先ほどの男性が該当する場合、病院では184までありうることになります。



つまり「正常な血圧は130」と言っても、「平均的な60歳代の人で、やや血圧は高めで元気な体質の人」は病院で測定すると184も「ごく普通に」ありうるということになります。



私たちは血圧をどのように考えればよいのでしょうか?



(平成26年4月24日)
posted by 武田邦彦 at 17:45| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

1.血圧を理解する(1)

120: 厚労省、関係学会がいう「望ましい血圧」
130: 厚労省、関係学会が言う「上限」
150: 数万人の「健康な人」の血圧の「上限」
180: 80歳以上の人が長寿になる血圧
最初に4つの数字を挙げましたが、命や健康に大きな影響を与える「適切な血圧」がこれだけあるというのはどういうことでしょうか? 結論から先に言いますと、原因は「単純な考えと未熟な医療、それに利権」です。でも、そんなことに私たちの命や健康を託することはできませんから、このブログで「本当のこと」を明らかにしたいと思います。



なぜ「血圧」があるかというと、心臓から全身にくまなく血を流すためには、圧力が高くないといけないので、水銀柱で測定した圧力に換算して150ミリの圧力の場合、普通、「血圧は150です」と言います。私たちが住んでいる地球は1気圧なので、水銀柱では760ミリだから、約0.2気圧になります。



水銀は重たいので、一気圧で760ミリ、つまり76センチしか上がりませんが、水は水銀より軽いので一気圧で10メートルまであがります。だから、0.2気圧というと、2メートルの高さまで水が上がるぐらいの圧力です。人間の身長がおおよそ1.6メートルですから、このぐらいの圧力がないと人の体にくまなく血液がいかないので、理屈通りです。



つまり、血圧というのがあるのは、人の体の隅々まで血をいきわたらせるためなので、血圧が下がると「血の巡りが悪くなる」と言うことが分かります。血の巡りが悪いというのは健康に多く影響します。昔は「薬」というのがあまりありませんでしたから、自分の血液の流れを良くして病気を治すことがもっともよかったのです。



血の成分は、鉄分、酸素、栄養、白血球のような敵をたおすもの、免疫、血が漏れないように固まらせる成分などがあり、人間が健康に過ごしていくためには血はもっとも大切なものの一つです。



そこで、お風呂に入る、足を温める、マッサージ、暖かいところにいる、日光浴をするなどが治療法として用いられました。現在でも「温める」ということは、免疫力もあがり、感染症を防止することにも大切と考えられています。つまり「血は万能の薬」とも言えます。



心臓から遠く、どうしても血の巡りが悪くなりがちな足の指などが、腐ったりするのも血の巡りの一つです。また頭を働かせる時には全身にめぐる血の4分の1も使いますから、ボーっとしないためには血をどんどん、頭に回さなければなりません。血液を送る心臓は一瞬でも止まっただけで、大きな打撃になります。



ですから、常識とは逆ですが、「血圧は高いほうが健康」ということになります。ただ、弱った水道ホースに高い圧力の水道水を流すと、「水道管が破裂する」ということもありますから、「どのぐらいまで大丈夫か」というバランスが大切ということです。



それには、人生観も関係します。元気な方が良い、死ぬときは死ぬという乱暴な人は血圧が高いほうが良いということにもなります。これが「血圧」なのです。最近では血圧は低いほうが良いと錯覚している人が多いので、まずは基礎から考えていく必要があります。



(平成26年4月23日)
posted by 武田邦彦 at 17:44| Comment(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

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